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『それでは今週第一位にランクされました、Rouge【ルージュ】の新曲で《祈り》です。』  液晶テレビのスピーカーから、若い女性の声で曲紹介がされる。  すると周囲にいた女子社員が一斉に『キャー!!!』と悲鳴を上げるのを背後で聞きながら、桂木瑠威【カツラギ ルイ】は明日締め切りの特集記事で悩んでいた。 「本当に格好良いわよね!Rougeって!」 「彼ら、あれでも三十代後半だって!!同い年の男性陣とは違うわよね!」 「あーん、いつか彼らと一緒に仕事がしたい!」  デスクで仕事をしている男性陣は眉間に皺を寄せて、液晶画面の前に集まっている女性陣を睨みつけている。  そんな男性陣の睨みなど微塵も感じないのか、女性陣はキャーキャー言いながら液晶画面にくぎ付けだ。  特に画面にヴォーカルがアップされると更に黄色い悲鳴を上げる。  さすがに苛立ってきたのか、瑠威がキレた。 「お前ら!テレビばっか見ていないで仕事をしろ!」 「えーっ!!」 「どうしてですか?」 (こいつら・・・。)  眉間に皺を寄せながら、瑠威は更に言葉を続けた。 「そんなに仕事がしたくないのなら、さっさと帰れ!仕事をやっている人間の迷惑だ!」 「副編集長がそんなことを言っていいんですか?」 「やかましい!仕事をしない奴はさっさと帰れ!」  ただでさえ、二カ月後に発売が決定されている音楽雑誌の特大号の特集記事で何を組むかを悩んで苛立っている瑠威にとって、女性陣の声は迷惑以外の何物でもない。  まして、画面に映っているアーティストに対して瑠威は見たくもなければ、 歌も聞きたくないぐらいに嫌悪している。  瑠威の怒りに賛成なのか、男性陣が『そうだ!』と援護していると、ドアが開いた。  開いたドアからはネクタイを外した男性が『うるせーぞ!』と怒鳴りながら入ってきた。 「副編集長!何でうるさいんだ!」 「申し訳ございません。今、音楽番組が始まっていまして・・・。」 「またRougeで騒いでいるのか?女性陣!騒ぐ前に仕事を済ませろ!締切日を早くするからな!」  脅しながら男性がズカズカと部屋の中心を歩いていくと、その奥にあるデスクの席に座った。  そして手に持っていたビニル袋の中身を出すと、整理を始めたのである。  ビニル袋に入っていたのは、ビン酒や酒のつまみばかりだ。
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