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「馬場!誤字脱字が多過ぎだ!それに、何を訴えているのかも分からない!すぐに書き直せ!それと瑠威、こっちの原稿は文章の出だしが悪過ぎる!こっちも書き直しだ!」 「分かりました。すぐに修正します!」  赤ペンだらけの原稿を受け取った瑠威はすぐさま、原稿を作成したスタッフに返却した。  そして自分の原稿を和敏に提出すと、やはり修正だらけで返ってきた。  いつまで経っても彼の納得できるような原稿が書けない。 (いつになったら久須美さんに面白いと思ってもらえる原稿が書けるんだろう。)  自分のデスクに戻った瑠威は、パソコンの画面に原稿を出すとマウスとボードを巧みに使いながら修正を始めた。  すると、彼の耳には懐かしい旋律と歌声が聞こえてきた。  どうやら先ほどの液晶画面から聞こえてくるようだ。  上半身だけを液晶画面の方へと向けた瑠威は、ズキッと胸の痛みを覚える。  どうやらスタッフの誰かがライブDVDを流したのだろう。  画面には二度と見たくないアーティストが映し出されていた。  切ない旋律に切ない詩と声。  この曲を聞く度に、瑠威はグッと唇を噛む。  自分の席から瑠威の様子がおかしいことに気が付いた和敏が気付き、大きな声でスタッフに注意を始めた。 「誰だ!RougeのライブDVDを流しているのは!仕事にならないから消せ!」 「分かりました!申し訳ございません!」  注意を受けて、若い男性スタッフが液晶テレビの電源を切ると、室内はシーンとなった。  それでも瑠威の様子は変わらない。  音が聞こえなくなっても、瑠威の心は無意識のうちに悲鳴を上げているのだ。 (いい加減に忘れないと!俺は音楽関連の仕事をしているんだ!それなのに、この曲を聞く度に動揺してどうする!)  深呼吸をしながら、自分に言い聞かせる。  そして気分が落ち着いたところで、瑠威は仕事を始めたのだ。  遠くから和敏が心配そうに見つめていることにも気付かないまま。
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