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「ああ!」
先ほど、満の呼び掛けにビックリしたのを彪は思い出した。
それで手元が狂って二階へ…と色々抗議を言おうとしたが。
「…うるさい。早くボール取りに行け」
冷静に無表情で言い放つ満。
「はぅ!」っと彪は何も言えず。
ただ何かを言おうと伸ばした手が無念を物語って居た。
「…トホホ…」
肩をグッタリさせ
先程の取りに行く勢いを無くしトボトボと歩く彪。
その背中は哀しい男の哀愁そのままにも……
多分見えて居た。
トボトボとガックリの彪の背を見て。
「…………」
クスッと満は声に鳴らない笑いで笑っていた。
彪は満が笑っているのを知らずトボトボと舞台裏の階段を歩き。
「…何や。今日は厄日か?」
ハァ…と深いため息を吐き一人愚痴りながら階段を上がる。
見晴らしの良いバルコニーみたいになっている二階の廊下を歩き、投げて落としたボールを探す。
さほど歩かない内にボールは見付かる。
女子側のリンクの真上の二階廊下だったからだ。
バルコニーの落下防止の手すりから下を見ると茶色で木目調の体育館床板で、少し怒り彪を見上げる一人の女子とそこから離れた場所で彪を見上げ見つめる無表情の満が居た。
「……痛いなぁ」
心情的痛みを感じながらボールに向き直って取ろうと手を伸ばす。
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