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「ふああああ」
大きなあくびをしながら校門をくぐる。昇降口までの長い距離。周りから朝の挨拶が飛び交う中、重い足を一生懸命運ぶ。
グランドの砂が歩速に合わせて音を立てる。自分の音だけじゃなくて周りの音も聞こえる。リズムはみんな違う。
ある程度一定のリズムの中に大きく速い音がこっちにむかって聞こえてくる。その音が一番大きくなった瞬間。
「おっはよー!」
「うわっ」
俺がよろけるくらい後ろから聞き覚えのある声と共に抱きついてきた。一瞬バランスを崩しそうになるも、なんとか持ちこたえた。
俺は大きなため息を一つ鳴らし、冷静にかつ多少の怒りを込めて「草太」とそいつを呼んだ。
「それやめろって言ってんだろ」
「えー、これやんないと一日が始まった気がしないんだもーん」
なにがだもーんだ気持ち悪い。第一やられるほうの身にもなってみろ。毎朝毎朝ハイテンションでこられたらたまったもんじゃない。
俺が改めて歩こうとすると、草太がニコニコしながら俺の横についた。別に並んで歩くのはいいんだが、ニヤついてるのはまた別の話だ。
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