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屋敷の中の一角に静邦の部屋はあった。
静邦の部屋は庭に極めて近いところにある。
そのため、紅色の櫻も静邦の部屋から見える。
それなのにも関わらず、忠治はとても静邦の部屋が遠く感じた。
なのでなのかわからないが、忠治は癇癪を起こしそうになりながら、静邦の部屋に着いた瞬間
「静邦!!やれ、静邦よ
占いの結果はどうなったのじゃ!!」
そう言いながら、部屋の真ん中にある卓にいた静邦の近くまでどたばたしながら、歩いていった。
「二人生きとし、一人離し…
そうすれば、殿は幸せになれましょう」
静邦は興奮気味の主を冷めた目で見ながら、呟いた。
二人とも生かして、一人はどこか遠くへと追い出せば、幸せになれる。
そう、乳兄弟に言われた忠治はまた悩みに悩んだ。
一人をどちらにすべきなのか。
そして、どこに捨てればいいのか。
「殿、どこかの別荘に傍らの姫君を住まわせたら、どうでしょうか」
静邦はそういうと忠治に向けていた視線をあの紅い櫻に向けた。
「殿は白河の櫻山に別荘をお持ちでしょう。
そこにあの紅い花弁の櫻と数人の女房などとともに移らせれば、姫君にも幸せは訪れるでしょう」
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