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蘭香が産屋に入ると中は喜ばしいことが起きたとは思えないほどの悲しげな雰囲気だった。
「殿、説明なされたのですか」
蘭香は自分が喋るべきときではないと思いながらも口を開けてしまった。
このような雰囲気はたとえ、もう大人のように…
いや、それ以上に冷静な蘭香という女童にも耐え難いものだった。
忠治は蘭香の問いに首を横に振って答えた。
殿は父親の占いを伝えにいくと言っていたのに…。
蘭香は少し驚きながらもいつもの冷静さをここで取り戻した。
「あの結果を…、蘭香…。
おまえが言ってくれないか」
蘭香は忠治が言った弱りきった声の言葉に強く頷き、もう一度口をあけた。
「静邦からの占いでございます。
お二方様とも生き、お一方様は離れた地に赴かせる。
そのお一方様は二人子をみれば分かるでしょう」
その声にいち早く反応したのは忠治の北の方である桜波(さくらなみ)であった。
「忠治様、ということはこの花びらが落ちた子の方でしょうか…。
それとも…」
桜波は夫である忠治に問いただした。
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