第1幕 はじまりのとき

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それは二人子が産まれたときに遡る。 産声が同時に聞こえ、みな驚きを隠せなかったときだった。 誰かが声を張り上げて言った。 「二人子です、北の方様…」 桜波にはそのような声も聞こえなかった。 なぜなら、目の前にあるはずもない花びらが舞っているのだ。 この産屋の中に花びらが入ってくるような隙間はない。 産屋の中に木があることもだ。 その花びらが桜波にはとても麗しく見えた。 普通より紅い桜の花びらはふわりふわりと風に舞いながら、左にいた姫の手のひらに包み込まれるように落ちていった。 「なんなの、今の花びらは…」 桜波はそう呟くとあの桜の花びらがもう一度見たくなった。 いち早く桔梗がその言葉に反応した。 「北の方様、どうかしました??」 「桜の花びらが左の子の手のひらの中に…」 「え…。左の子ですか」 桔梗は不審に思いながら、左側に寝ころんでいる姫の手をどちらも見た。 しかし、花びらなどない。 その代わりに手のひらにあったものは… 紅い花びらの櫻の紋章のような痣だった。
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