第1幕 はじまりのとき

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蘭香にはそのような痣について、静邦に教えてもらった覚えがあった。 しかし、どんなことだったかを全く覚えてないのだ。 ただ、あまりよくないような気がして恐ろしくなった。 「蘭香、どうしたの??」 桜波はすっかり黙ってしまった女童に呼びかけた。 「いえ、父から何か聞いていたような気がしまして…」 蘭香がそういうと桜波は驚いた様子で問いだした。 「静邦はこの痣のこと、何と言っていたの??」 「それが覚えていないのです。 …ただ……」 「ただ…??」 「あまりいい意味ではなかったような気が致します」 その場の空気が一気に凍り付く様を蘭香は目の当たりにした。 やはり、言わない方が良かった。 蘭香は周りの空気でそれを察した。 そんな中、桜波は1人口を開いた。 「その話を聞く限り、やはり、この子の方を…」 「そうだな、櫻子。 この子をあの奇妙な桜とともに白河の櫻山の別荘に移そう」 「奇妙な桜とはなんですか??忠治様」 「あぁ、この子らが産まれたと同時に咲いた紅い花びらの桜のことだ。 それも移した方が良かろう」 「そうですね、移しましょう」 二人子の両親は静邦の占いの通り、一人を白河の櫻山というところにある別荘に移すことを決意した。 その場について行くのは、発言に責任を持とうとした蘭香と乳母の桔梗、乳姉妹の菖蒲になった。
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