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「わたくしの親としてのこの子に出来ることは名をつけることですわね…」
あれから、間もなくして紅い花びらの桜は白河へと運び出された。
そして、周りに二人子とバレぬよう、産まれた夜には蘭香たちは白河へと歩み出すのだった。
だから、桜波は急いで名を考えなければならなかった。
考えていた名はもう一人の姫に与えてしまった。
舞子…。
それがもう一人の姫の名だ。
それに似たような名がよいのか、似ていない名がよいのか…。
桜波は迷いに迷った。
そのときだった。
あの、手のひらへと消えていった紅い花びらのことを思い出したのは…。
「紅…紅い花を手のひらに持つ子……
紅子(べにこ)だわ!!」
それが紅子姫に名をついた由来だった。
そして、紅子姫は三人といくらかの従者とともに雪河原殿と呼ばれし屋敷から出ていったのであった。
それから、紅子姫がどうなったのかは誰も知らなかった。
ある者は鬼に喰われて死んだといい、またある者は紅子姫自身が鬼になってしまったと言った。
しかし、そのような話をするのも雪平家に仕える者だけで、他の家の者たちには、舞子姫の二人子の姉君は産まれてすぐ亡くなられたとされていた
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