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「雪平家の中の君といえば、二人子の姉である大君だよな…」
そう誰かがぽつりと呟いた。
それに続けるかのように他の人々も騒ぎ出す。
雅成はその話に出てきた姫君のことを知らなかったのだ。
雪河原大納言と呼ばれている忠治と関わりがあるのはこの宴にいる者の中で自分一人のはずなのにだ。
雅成はその大君と呼ばれし姫君に会ってみたいと思った。
しかし…
「あの櫻鬼姫に喰われたとか言う姫君か??」
「雪河原大納言殿もなんで、姫君を櫻山に捨てたのか…」
櫻鬼姫??喰われた??
どういうことだろうか。
しかも、捨てたなど…。
あの雪河原大納言がするだろうか。
あの人は正室を若くに亡くされて、後妻を受け入れてからも雪解けの君にとても気にかけている。
そんな人が姫君を捨てたりするのだろうか。
「その大君って誰のことなのだ??」
雅成は気になって、口を開いてしまった。
すると、友人たちが騒ぎ立てた。
「雅成が話題に入ってくるなど、珍しいこともあるなあ…」
「ついに雅成が女人に興味を示したか!!」
「しかし…、櫻鬼姫に喰われたもうこの世の者じゃない姫じゃなぁ…。
通うことも出来やしない」
「その櫻鬼姫ってなんなのだ??
私はそれが知りたいだけだ」
雅成は自分の目的はあくまで喰った側のことだと提示すると、友人の顔を見回した。
驚いた顔をしたものがほとんどの中、一人落ち着いた顔をしたものがいた。
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