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「雅成がせっかく女人に興味を示したのに残念だったな…」
そう呟いたのは三条大納言の息子の藤磐良和だ。
この男のも雅成とは言っても幼い頃からの友人である。
雅成は良和の方を向き、わざとらしく溜め息をついた。
「そう言うわけではないと言っているだろう。
私は姫君など、どうでもよい。
変な話をしだしたから気になっただけだ。
なぜ、噂の世界のものでしかない鬼をみな信じるんだ??
私にはそれがよくわからない」
「でも、鬼に喰われたという女人がいるんだ。
嘘ではないだろう??」
「そんなの病で倒れたとかが回り巡って鬼に喰われたという嘘に変わったってだけだろう??」
「でも、死体はなかったって…」
「死体など簡単にどうにかすることは出来る。
埋めたり、焼いたりすりゃなくなるだろう??
ということより何故、そんなに良和は知っているんだ??」
「女人の噂は何でも知ってるぞ」
「良和は女通いに関しては、とても雅だものな」
「昨日も元淡路守の中の君だろう??」
「なぜ、そんなにたくさんの女と関係を持てるのだろうか。
羨ましい限りだ」
と口々に友人たちが騒ぎ立てるところ、雅成はまた溜め息をついていた。
良和に女人のことを何故知っているなど聞くなんて馬鹿なことをしたものだ。
この者は本当に生粋の女通いの名人なのだ。
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