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あの宴の次の日、雅成は馬を走らせていた。
最初は気分転換だった。
しかし、雅成の近くにサクラの花びらが舞い落ちてきたとき、
雅成はなぜか、その桜の木を見たいと思ってその木の方面へと馬を走らせることにしていた。
木々の間、竹林の道…。
神隠しにあったかのように近づけば近づく程、あの櫻の木は見えなくなる。
そして、雅成はどの方向に向かって走っているのか分からなくなるのだ。
そう思い、辺りを見回すとまた、春の雪がひとひら雅成のもとにあたかも舞い誘うかのように舞ってくる。
そして、その方角に向かってまた、馬を走らせるのだ。
すると、雅成は山の麓にいつの間にか、着いていたのだった。
ここまで来れば、櫻の木もすぐに見つかるだろう。
雅成はそう思ってまた少し歩みを進めた。
すると、やはりまた、あの桜の花びらが舞ってくる。
雅成はそちらに体を向けた。
そこで見たのは、あの凛と儚い櫻ではなく、何とも薄気味悪い人の血を吸ったかのような凛として麗しいが、恐ろしい紅い花びらを持った櫻だった。
しかし、雅成にはその桜でさえも儚く見えた。
そして、その桜は古びた屋敷の中にあることに雅成は気づいたのだった。
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