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琴の音がする…。
雅成はただただ驚くばかりだった。
このように廃れた屋敷に人が住んでいると思えなかった。
しかし、聞こえてくる琴の音は相当の奏者だということが分かるような…。
綺麗な澄んでいる音なのにも関わらず、どこか淋しさに溢れていてこの世のものとは思えなかった。
雅成は迷った。
この館にもし、人が住んでいるとしたら…
もしかしたら、ここは貴族の別邸かもしれない。
しかも、琴の得手は姫君に多い。
そう思うと簡単には入ってはいけないと思った。
あの桜を近くまで行って見ようとするのはいけないことではないか??
雅成はどうしようか迷った。
しかし、雅成がそう悩んでいる合間に幻かのように琴の音は消えていた。
雅成は思った。
もしかしたら、琴の音は幻聴だったのかもしれない。
もしここが貴族の別邸でここに誰か自分のように高貴な人々がいるならば、ずっと門のところにいる雅成を何者かと見に来て、主に伝えるだろう。
なのに、来ないということは誰もいないのだ。
雅成は馬を門の近くにあった木にくくり、思い切って桜の木へと歩みを進めた。
そこにいたのは、1人の姫君だった。
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