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そのとき、屋敷の中へと戻った姫君…紅子は慌てていた。
あのお方は誰だろうか。
紅子は自分のした失態に頭を悩ます。
そのまま琴を弾いてればよかった。
そしたら、この忌々しい姿をあのお方に見られなくても済んだのに……。
いまごろ、怒っていらっしゃるはずだ。
鬼を見てしまったと。
京で自分が何と呼ばれているかは知らない。
でも、粗方鬼とかあやかしとかそう呼ばれているだろう。
小さいころに何度か聞いた。
この近くを通る人がここには鬼が住んでいる。
雪河原大納言さまの大君を食い尽くした鬼がいる。
紅子はわたくしがその大君よ!!と叫ぼうとした。
しかし、蘭香がそれを許さなかった。
「姫様は隠された存在なのです。
あのような愚かなことに耳を傾けてはいけないです」
って言って……。
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