黒球

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20××年、突然アイツは現れた。その直後地球全体が騒ぎ始めた。 これまで人類が築き上げてきた常識がねじ曲げられた。 地球上の生命体(人類以外)が異常な進化を遂げ、地形は変形し、人間は食物連鎖の底辺に叩きつけられ、逃げるように地下へと隠れ潜んでいる。 そして、全ての元凶であるアイツは一言で言えば、謎の塊だ。調査すればするほど謎は深まっていくばかりで、わかっている事は、アイツは黒く硬い無機質の球体って事だけである。 これが、人類の数年の調査結果である。そんなの一目見れば誰もが分かることだと調査団員以外の人間は口を揃えて批判してくる。 そう、今人類は絶望的な危機に直面しているのだ。 皆で力を合わせて謎の球体の謎を解いて、地上を取り戻そう……というような話を何かの本で読んだことがある。 正直、心動かされる話ではなかった。そんな昔の話を耳にしても、僕が産まれた頃には既に地下で当たり前のようにくらしている。何の苦労もないし、地上の良さもわからないからだ。それに俺(スバル)は調査団員だから地上の恐ろしさもわかる。地上は進化生物(ノット)がウヨウヨいて、水も食料もない。だから別に地上で暮らしたいという欲求はない。調査団員になったのも給料がいいからであって、それ以上の理由は何もない。 今、調査団員であるほとんどがそんな奴ばかりだ。そう思いながら今日も危険な地上へアイツの調査に繰り出す。 『気が進まない』と思いながらも今日も無事に誰も死なずに戻ってこれたことに感謝した。 そういう毎日をただただ繰り返していた。そして、今日もいつものように調査から本部に帰ってくると、見知らない顔の人が挨拶して俺(スバル)の向かいに腰かけた。『誰だ?』と疑問になったが、新入団員かと思い何も聞かなかった。 すると、今日は珍しい事に団長から収集の声がかかった。たぶん、新入団員の紹介の事だろうとすぐに気がついた。 だが、そんな軽い話ではなかった。 『おーい、皆あつまったか!?』といい団員は点呼を取り始めた。そしてまた話始めた。 『皆、急な報告だが明日からこの白鳥君が団長だ。そして、僕は今日を持って退職です。』と、いいはなった。本当に急な報告だった。そして話し手は白鳥新団長にかわった。 『君達は、全人類の命を抱えられる根性、それに見合う技量は持ち合わせているか?』
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