黒球

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医療団員の元へ行くと白鳥団長の手術がすぐに始められた。 そして、白鳥団長の手術結果が気になり、いち早く結果を聞き入れようと本部で寝ずに待つつもりだった。けど、疲れと眠気にやられ、眠ってしまった。 『スバルさん!!!』 俺は無理矢理起こされた。あまりに肩を揺らすので少しイラッとしたが、起こされる覚えがあったからだ。 『し‥‥白鳥団長の手術はどうなりましたか!!?』 医療団員の団長らしき人は、即答した。 『はい、今のところ異常はありません。』 『そ‥‥そうですか。』 心の中でホッと溜め息をついた。安心したのかまた眠気が襲ってきた。そして再び、眠りについた。 翌日、白鳥団長はいないがいつも通り調査に向かった。今日も僕等のグループは黒球の調査だった。一週間ごとに交換するシステムなので仕方がない。 そして、黒球周辺地帯に着くやいなや紅い斑点の広がり具合を見に行った。が、近づくにつれて、目を疑った。そして、膝から崩れ落ち、その場にすわりこんだ。 『嘘だろ‥‥昨日はまだちいさかったのに‥‥。』 黒球の紅い斑点は3分の1を占めていた。それと同時にこの星の終わりが近い事が頭をよぎった。 他の団員も黙り込みそこに立ち尽くしていた。昨日のように進化生物が襲ってくる危険はあったが、そんなことを考えられないくらい頭の中が真っ白になっていた。 その沈黙を破ったのは携帯の着信音だった。俺は正気に戻り、電話をとった。 『‥‥もしもし。』 『スバルさんですか!?』 電話をかけてきた相手は医療団員の団長だった。 『‥‥今立て込んでるんで、戻ったらでいいですか!?』 それを言うと俺はすぐに電話を切ろうとした。正直、心の整理がついていなくて、人の話を聞く余裕が無かったからだ。 『待ってください!!』 その声で、切ることを止めた。 『白鳥団長の容態が急変しました!早く戻ってきてください!!』 と、話した後一方的に電話を切られた。 『‥‥‥‥なんなんだよ‥‥。』 と、舌打ちをすると絶望的な気持ちにみまわれた。皆も電話の内容が漏れて聞こえたのか、先程より面持ちが重くなっていた。その俺たちを哀れむかのように静かに雨が降りだした。黒雨(こくう)だった。この世界では普通だが、何故かその時の黒雨は不気味に見えた。
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