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ちゅんちゅん、なんて平和そのものを表すような雀の声が窓の向こう側から聞こえてくる日曜日の朝、あたしは自分の目を疑った。
「…………え、」
目覚ましが鳴って、目を覚まして、目覚まし止めて、体を起こす。ここまではいつもの朝と同じ。部屋の様子も、昨夜寝る前に見たものと同じだった。
ただ一点を除いて。
真横の壁に、黒い丸が。
あれ、これって最近どこかで見たような。そう、テレビの中でここ毎日、飽きるほど見てる。
「う、ええぇえぇぇええっっ!?」
「椿どうした!!!」
あたしの叫び声からコンマ1秒、ガチャバターン!と穴が空くんじゃないかと思う勢いで扉が開き、人が飛び込んできた。
下は制服、上はボタン全開のパジャマ。どう考えても着替えてた途中であろう格好の男性――兄、朔良(さくら)はあたしの肩を掴んだ。鬼のような形相が物凄く近い!怖い!
「どうした不審者か!?覗かれたか!?変なもの見せられたか!?」
「不審者前提!?まず今の兄ちゃんの格好が不審者っぽいよ!!」
「どこが!?」
「ほぼ半裸なとこが!!」
あたしの言葉にはたと気付いたようで「椿が心配だったんだ……!兄ちゃんを嫌わないでくれ……!!」と慌てて肩から手を退け、ボタンを閉めだした。
しまった不審者っぽいって言ったのがいけなかったか……!でも半泣きになるまでメンタル弱いとは、大丈夫なんだろうかこの兄は。
嫌いにならないから、と子供を宥めるように言えば、顔をあげて頬が緩みに緩んだ笑顔。我が兄ながらなんて単純。本当に大丈夫かなこの人……!自分で言うのなんだけどどっちが上か分からない気がする……!!
「で、一体どうしたんだ?変な夢でも見たのか?兄ちゃんが抱きしめてよしよししてやろうかっ!」
「結構です!!」
「そ、そんな力強く拒否しなくても…!」
「ああもう兄ちゃん泣かないの!
さっきのは。ほら、そこの壁に…」
「壁に?」
兄ちゃんの視線はあたしが指差した場所へと誘導された。
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