始まり

4/19
前へ
/28ページ
次へ
テレビでは、近付いた人は気絶したと言っていた。あたしと穴との距離は1メートル弱ぐらい。もし、これが本当に世界中を脅かしてる黒い空間だとしたら……あたしは今、物凄く危険な場所にいるんじゃないだろうか。 でも、あれは世界中誰もが。あたしも兄ちゃんもテレビ越しで見えていた。だけどこれは兄ちゃんには見えなかった。何が違うんだろう。警察に電話した方がいいのかな。もし警察の人も見えなかったら、いたずらするなって怒られるかも。それはやだなぁ。 じいっと黒い穴を見つめていたら、心がうずっとくすぐったい。興味本意で近付くなと言われたら近付きたくなるのが人間。あたしだってまだ中学生で、好奇心は捨てちゃいない。 「少し、だけなら、」 いいよね?と誰もいないのに言い訳して、穴に向かって腕を伸ばした。 「っい!?」 あとほんの数センチまで近付いたところで、びりりとした軽い電気みたいなのが指先から走ってきた。慌てて手を引っ込めてまだ痺れる手をさする。 命に別状ないって言ってたよね……!?え、電気走ったけど!? 自業自得と言えば仕方がない。とにかくベッドから降りて距離を空けた。やっぱりかなり危ないとこにいたんだあたし……! でも、これで確かに穴がそこにあることは分かった。でも、なんで本当に兄ちゃんには見えなかったんだろう。もうわけが分からない。あたしおかしくなったんだろうか…!? 他にも誰か見える人がいれば。でも、お母さんもお父さんも今日は朝から出掛けてるし兄ちゃんには見えないみたいだし……。 「あ、」 そうだ、今日有紀達が遊びに来るんだった。 3人に見えるかどうか聞いてそれからどうしようか考えよう。うん。そうしよう。 とにかく今は、朝ごはん食べよう。なんだか起きたばっかりなのにすでに疲れがどっときたなぁ……。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加