第一章 事件〈ハジマリ〉

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2067/4/7 AM7:15 [東京・新宿] ガヤガヤガヤ と、野次馬が騒いでいる。 「すみません、ちょっととうしてもらえませんか? 」 人混みをかき分けながら、「いかにも新米です」という感じの刑事が現れる。 「遅いぞ、何やってたんだ!? 」 「すみません、警部。道に迷ってしまって……」 どうやらこの若い刑事は方向音痴のようだ。 「バカ野郎! 顔洗って出直してこい! 」 「はい! 」 そう言って、来た道を戻ろうとする刑事。 「……そういう意味ではない」 「? ならどういう意味ですか? 」 「……もういい。白河、持ち場に早くつけ」 「はい」 そして、彼は現場に向かおうとする。 「お、良平じゃねぇか。交替はお前か」 と、一人の刑事が彼に声をかける。 「あ、荒谷さん。お久しぶりです! 」 「確かに久しぶりだな」 荒谷はそう言った後、声を抑えて 「今回のホトケも見ねぇ方がいい。しばらく一人でトイレに行けなくなるぞ」 と、言って去っていった。 ちなみに、『ホトケ』というのは、所謂死体の事である。他にも、被害者の事を『ガイシャ』と呼んだりする。 まぁ、つまり、「ホトケを見ねぇ方が良い」というのは、死体が余りにもグロテスクだ、というわけだ。
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