第一章 事件〈ハジマリ〉

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「うっ……」 あまりにも酷い死体――いや、これを死体と認めるのにも抵抗があるくらいだ――だった。 手足は切り裂かれ、身体の中心は、大きく陥没している。 首から上は、斬り飛ばされて、切り刻まれて、もはや原型をとどめていない。 だが、それだけではない。 「……これで4件目、ですか……」 そう、『全く同じ殺人』がすでに3件あったのだ。それも全て、この新宿で、である。 「今回の犯人〈ホシ〉は、よっぽど頭が狂っているみたいですね」 「まったく、おちおち酒も飲めねぇ」 「そうですね。それにしても酷い……って誰ですか!? 」 「あぁ、こういう者だ。ほれ、名紙」 名紙には、 『大平探偵事務所・所長 大平 隆之助』 と、書かれていた。 「……関係者以外立ち入り禁止ですよ? ここ」 「細かいことは気にするな。俺達は今、でっかい事件に行き合っているんだ」 「そうでしたね、すみません」 そう言って、立ち去ろうとする良平。 そして、 「って、誤魔化して許されると思っているんですか!? 」 後ろ向きに戻ってきて、言う。 「ハハハ、やっぱり誤魔化せんか……チッ」 「今さりげなく舌打ちしませんでした!? 」 「い~や? ナニモシテナイヨー」 「何故棒読み!? そして、早く出ていって下さい!! 」
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