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ぐるぐる回る暗闇の中、粘りのある沼から上がってくるような感触の中で看護師さんの声が聞こえました。
手術台から移動するので体重をずらして欲しい というような事を言っていたのだと思います。
それは手術が終わった事を意味していました。
体が重くて力が入らず、あまり協力出来なかったと思います。
もう一度名前が呼ばれて同じように体を動かしました。
そこは302号のベッドでした。
赤ちゃんの居ない世界でした。
酔っ払っている時のような体の重さ。
目を閉じたり開けたりしながら子宮の痛みを感じていました。
ゆっくり沼からはい上がった頃、誰かが来た気配がしました。
まだしばらく目を閉じていましたが、普通の重力を取り戻した頃に目を開けると それは迎えに来た旦那さんでした。
既に夕方の4時を回っていました。
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