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簡単な手続きを終え、すぐに青年、久能真は集合住宅の家主である老婆に連れられて自分が借りる部屋へ案内された。
部屋は二階の一番奥側。玄関に入るとすぐ右手にはそこはかとなくモダンな、金属部品の多い狭い調理場。奥は六畳の居間。更に一畳半分程度の収納スペースがある。一辺にしかない窓は南側向き。
一人暮しにしては、幻想郷では悪くは無い環境かもしれない。
「引き払う時に大体元どおり綺麗な状態なら問題ないから、好きに使ってくれよ。」
「はい。」
打って変わってにこやかに微笑んでいる老婆を横目に調理場や押入れを軽く見回している。
「前にここを使ってた人、一週間ぐらい前に引き払ったんだけどさ、ちょっと気味が悪かったんだよねぇ。いつも真っ赤なマント羽織って出かけてたのさ。部屋は綺麗に使って返してくれたからあんまり文句は言えないんだけどねぇ。
まぁ、何か不備があったらあたしんとこ来て教えてくれよ。空き部屋に移したげるからさ」
「見たところ綺麗ですから……多分、大丈夫です。」
「そうかい?それじゃ、あたしゃ帰るよ。」
「はい、ありがとうございます。」
老婆は玄関から出、戸を閉めて自宅へ戻って行った。
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