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「そろそろ定時連絡の時間だな。」
空が黒に染まり星が夜天に輝く戌の刻、木々が風で揺らぎ擦れ合う音を睡眠導入剤に心地よい眠気を堪能していると、真面目な相方の声が耳に入り脳が活性化した。
「あ……あぁ、もうか……。」
「寝てたな? まぁ、気持ちは分からないでも無いけどな。」
今日お偉いさんから預かった仕事は、幻想郷でも有名な『紅魔館』で行われる晩餐会の警備。
何でも、最近物騒だから念には念を、という事で依頼されたらしい。
確かに、ここ最近天狗や外来人の無惨な死体が見つかって密かに話題になっている。だが、其れなりの力を持った化け物が揃った紅魔館、そこに更に化け物が集まる晩餐会を狙うなど、有り得ないだろうと部隊の連中が話していた。
実際、俺も相方もそう思っている。
だから部隊の大半は気づかれない程度に仕事をサボっているのだが、相方はそれでも律儀に仕事をしている。
「珍しいな。お前がサボりたくなるとは。」
「いつだってサボりたいとは思ってるぜ。 ほら、連絡するぞ。
青の三一より鷹の目へ定時連絡。東側外壁は異常なし。」
「青の三二より鷹の目。同じく異常は見当たらない。」
『東側外壁異常なし、了解。引き続き警備を行え。次回連絡予定は三十分後だ。』
「三一了解。」
「三二了解。」
あぁ、室内で座ってるだけの奴等が羨ましいったらありゃしない。
『あぁ、待て。依頼者から連絡だ。』
「…………」
『「食後のデザートはパンプキンパイでいいですか?」……だそうだ』
「……依頼者にも気が利く奴がいるな。 ありがとうと言っておいてくれ。」
『了解。通信終了。』
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