act.2

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ガイラス・シティ東外れの街バークスの通りを、一台の黒塗りのセダンが走っていた。  「………」 後部座席に足を組んで座るスコルピオのボス…ルカ・ベネディクトは苛立っていた。 ダークグレーのスリーピーススーツを纏った彼の表情にいつもの傲慢なまでの余裕はなく、眉間にはくっきりと皺が刻まれている。 ルカが腹を立てているのは、己自身に対してだった。 五年前にこのバークスにおける自治を勝ち取ってからも、コヨーテへの警戒を緩めた事はない。 コヨーテはこの街にスコルピオが誕生した時からの宿敵で、父親の仇でもある。 だが、ハーヴェイ・オールビーが逮捕されて以降、コヨーテは目に見えて勢力を衰退させていた。 ハーヴェイが未だ強い影響力を持っていたとしても、このままいずれ潰れて行くだろうと考えていた。 まさか、再びこんな大規模なテロを起こすとは…。  「…ちっ…」 ルカは小さく舌打ちして、長い息を吐き出した。 このまま野放しになどしておけないが、とはいえ下手に動く事も出来ない。 五年だ…五年かけてここまで来た。 我々がコヨーテを押さえ込んでいてこそ、バークスの自治は成り立つ。
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