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何よりも、この街を再び戦場にするわけにはいかない。
ルカは車窓から、通りをゆく人々へ目を向けた。
国外のコヨーテの拠点がどこなのか分かれば、対処のしようもあるのだが。
しかし。
ルカは腕を組み、その水色の瞳を細めた。
今回のテロは、…コヨーテ単独の犯行だろうか。
これだけの規模のテロを起こせる程に勢力を回復していたのなら、今までそれを掴む事が出来なかったのが解せない。
協力者か、あるいは支援者か…いるのではないだろうか。
それも、生半可な相手などではない…。
思った時、窓ガラスにぽつりと水滴があたった。
途端にどんよりと曇った空から、ざあっと雨が降り始めた。
「………」
雨、か…。
ふいにルカは苦い表情を浮かべた。
あの日も、ちょうどこんな風に雨が降っていたな。
二年前のあの日、親父が死んだ。
そして、…あいつが俺の前から姿を消した。
「…キーファー…」
苦い表情のまま、ルカは静かにその名を呼んだ。
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