act.2

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夕方から落ち始めた雨はまだ降り続いていた。 13分署三階廊下奥の休憩スペースに佇むアガットは、腕時計を見やって息をついた。 時刻はもうすぐ午後七時になろうとしている。 廊下は薄暗く、アガット以外の人影はない休憩スペースも自販機の青白い灯りだけが漏れていた。 アガットは雨にぼやける夜景に目を細めて、冷たい窓ガラスに額を押し当てた。  「………」 この13分署の特捜課に戻って来てからというもの、レオンの傍にいる事が落ち着かない。 まともに、その顔すら見れない。 不可抗力とはいえ、やはり戻って来るべきじゃなかった…? いや。 アガットは目を閉じて、自嘲するように小さく笑った。 不可抗力…?…違う。 自分に下された処分は、本部からの異動のみだった。 この13分署へ戻る事を選んだのは、俺だ。 戻って来い…アガット。 あの日、病室でレオンが言った言葉が胸によみがえる。 抗えなかった。 心は、驚く程に正直だ。 好きだ…たった一言。 ずっと求めながら、求めてはいけないと思っていたその言葉に。 魂ごと持っていかれた。  「どうして、…俺を避けるんだ?」 嗚咽を漏らしかけた時、静かな声が耳に届いてアガットははっと顔を上げた。
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