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ホールの向こう崩れ落ちた壁の奥に、瓦礫が散乱し至る所で炎が燃え上がるカジノ場が見えた。
人々の悲鳴や泣き叫ぶ声が耳に届いて、ルカはぎりっと奥歯を噛んだ。
「…コヨーテめ…!」
忌々しげに吐き捨てた時、
パンッ パンッ パンッ
「……!」
続けざまに銃声が響いて、ルカは傍の車の影に飛び込んだ。
屈んで車体に背を預け、スーツの懐から銃を引き抜く。
荒い息をつきながら、スライドを引いた銃を右手に構えた。
「…くっ…!」
ガラス片が刺さったままの腹部が、焼けつくように痛む。
苦痛を堪え車体の影から銃声のする方を窺おうとした時、ふいに銃撃が止んだ。
「やはり…しぶとい男だな、ルカ」
ため息混じりのゆったりとした声が聴こえ、ルカは眉をひそめた。
…この声。
ルカは慎重に立ち上がると、銃を構えたまま声のした方に顔を向けた。
雨が打ちつける街灯に照らされた駐車場の数台の車の影に、サブマシンガンを手にした数人の男の姿があった。
五人、…いや六人か。
素早く視線を動かして敵を確認したルカは、中央に立つ男の顔を見て目を見張った。
「…ゲイリー・オールビー?」
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