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ルカは呆然とその名を呼んだ。
その顔は紛れもなく、ハーヴェイ・オールビーの二男ゲイリーだった。
馬鹿な…ルカは胸の内で呟いた。
この四週間、あらゆる入国ルートを調べ上げ監視させていた。
それを掻い潜って、入国したというのか?
いや、…ルカは思い直した。
一つだけ、…ルートなど使わずとも入国出来る方法がある。
「久しぶりだな、ルカ・ベネディクト」
ゲイリーは硬い表情のルカを見やって、薄ら笑いを浮かべた。
「二年前は、…ダリオの葬式にも行けずにすまんな?」
言ってせせら笑ったゲイリーに、ルカの眉がぴくりと動いた。
「…薄汚い口で、親父の名を口にするな」
低く押し殺した声で、ルカは唸るように言った。
「まぁ、そういきり立つな」
緩く首を振ったゲイリーはふいに笑みを消した。
「お前も、…じきに親父さんに会える」
言いざま彼が手で合図すると、男達は一斉にサブマシンガンを構えた。
「……!」
ルカが再び車に身を屈めると、弾幕を張るように銃を連射して来た。
窓ガラスが砕け散り、車体に蜂の巣状に穴が開いてゆく。
「…ちっ…!」
ルカは再び舌打ちした。
あの人数にこの怪我では、余りにも不利だ。
だが、…こんな所で死ぬわけにはいかない。
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