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   「…五年前の悪夢の再来だな」 デスクに置かれたパソコン画面に映し出されるニュース映像を見やって、パーカーにチノパンを履いたマックス・ブラナーがため息をついた。 ガイラス・シティビスタ13分署の特殊犯罪捜査課のオフィスには、ぴりぴりと張り詰めた空気が流れていた。 ニュースは今日午後三時に起きた爆破テロを繰り返し伝えている。 標的となったのはセレスタ区にあるショッピングセンター、セレスタ・オーシャン・スクエアで、エントランスホールのオープンカフェと一、二階の店舗数軒が爆発で吹き飛んだ。 死者は21名、負傷者は50名以上に登った。  「やっぱり、…コヨーテか?」 デスクの上に行儀悪く足を組んで座ったマックスが、傍らのレオン・バーティに視線を投げる。  「まず間違いないだろう。短期間に広範囲の場所を狙って、捜査をかくらんする手口…五年前とそっくりだ」 黒いシャツにデニム姿のレオンは、険しい顔で言って腕を組んだ。 アーチャー・ベイリーによる連続婦女殺傷事件から、およそ一ヶ月が過ぎていた。 現在ガイラス・シティは、連続爆破テロの脅威にさらされていた。 この四週間の間に、市警本部ビルのある中央サンティ区、北西ルーニー区、北東アスロー区、南西セレスタ区、そしてこの南東ビスタ区の各地で、地下鉄を含む主要な駅、路線バス、公共施設や商業施設などを狙った爆弾テロが頻発していた。
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