act.1

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   「…本拠を国外に移して、着々と勢力を回復させてたんだろう」  「………」 レオンが額を押さえて呻くと、アガットとマックスは複雑な顔で黙り込んだ。 ハーヴェイ・オールビーの逮捕から三年後、スコルピオのボス…ダリオ・ベネディクトがコヨーテの報復により命を落とした。 その直後、ハーヴェイの二人の息子デレクとゲイリーがバークスから姿を消した。 国外へ出た事は掴んでいたが、その後の足取りは不明だった。 この四週間に、国内へ入ったという情報もない。 恐らくはこのガルドセルドでの勢力回復は困難と見て、他国のどこかに拠点を移したのだろう。  「今頃、ルカは歯噛みしてるだろうな」  「………」 マックスがわずかに肩をすくめると、レオンは苦い表情を浮かべた。  「五年前のスコルピオとの取引の時、レオンが交渉役だったって本当?」 脇から声をかけられて、レオンが振り向く。 三人から少し離れたデスクに腰を下ろしたサラ・コールマンだった。 後ろで結い上げた鮮やかな赤色の巻き毛と、勝ち気な青い瞳が印象的な美女だ。 ブルーストライプのブラウスにライトグレーの活動的なパンツスーツを纏っていた。
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