act.1

6/9
前へ
/329ページ
次へ
   「なぁ、レオン」 レオンのシャツの袖を引いて、マックスが耳打ちするように小さく問うた。  「サラ、…恋人はいるのか?」  「…口説く気か?」 目を丸くしたレオンが小声で問い返す。 アガットもわずかに目を見張った。  「やめた方がいいと思うぞ…?」 レオンが眉を寄せて首を振る。  「何で?」 唇を尖らせるマックスに、レオンはふと真顔になった。  「サラは確かに美人だが、…性格はあの課長にそっくりだ」 声をひそめたレオンの言葉に、マックスの顔が引きつる。  「…冗談だよな?」 上擦った声で、マックスはすがるようにアガットを見た。  「いや。怒ると課長より恐い」 アガットは哀れむような目をして、マックスに首を振った。  「………」 マックスが一層顔を引きつらせた時、  「それは、…誰の事かしら?」 怒りを滲ませた声が聴こえ三人は肩を揺らした。 いつの間に傍に来たのか、サラが背後に仁王立ちしていた。  「いやいや、…冗談だ」 ほら…やっぱり課長より恐い。 思いながら、レオンはアガットの背に隠れようとする。  「もう!レオンはともかく、アガットまで何よ!」
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加