耳を塞いで、なんにも聞きたくないの。

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次の日、それは唐突に訪れた。 結局風邪を引いてしまった兄の看病をしようと真太郎に掃除を変わって貰い、 いつもよりいくらか早く家に帰る。 カンカンと階段を鳴らして駆け上がっていく。 「はと、ただいま」 一応、起こさないように声は抑えて靴を脱ぐ。 足音すら立てずに兄の部屋へ行き、ドアを開けると全裸の女がほぼ着衣のまま兄に跨っていた。 「…」 「…」 ことりも、ことりに気が付いた女も焦って動きが止まる。 具体的に言うとことりが止めたのは息の方で女は腰の動きだった。 「こと、どうした?」 けほ、と小さく咳き込むも、普段通りの兄の声に眩暈がする。 兄は、まだ、このだらしない性格のままだったと奥歯を噛み締め、ゆっくりドアを閉じてから、ようやく息を吐くことができた。
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