耳を塞いで、なんにも聞きたくないの。

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言ってみれば、彼は無一文でも生きていける人であると、自他共に理解していた。 そんな兄に、ことりは好意を寄せている。 だが、住まわせてもらっておいて好きだなんだと口にする気にはなれなかった。ことりとて、そこに頭が回らないわけではない。 寝顔や風呂上りを見られるだけで良いと、自分に言い聞かせていた。 「こと、おはよう」 寝起きの兄に髪をくしゃりとされるのも、兄妹という関係が崩れたらなくなってしまう。 「おはよう、はと」 そんなことになるくらいなら、ずっと妹でいたい。 ことりは兄に撫でられた髪を自分の指に絡め手櫛で梳いてから学校へ向かった。 「行ってらっしゃい」
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