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ーーーー俺が最近悩んでいたのは、流さんについてだ。
先程、流さんが何処かへ行ってしまう夢を見た。けれどあれは、此処最近、ずっとだ。
流さんは、元々俺たちとは異なった時代から来た人間だ。いつ唐突に彼女が元居た時代に帰ることになって、別れが来たとしてもおかしくはない。
………………別れを恐怖していたのは、流さんではなくて、俺の方だったのかもしれない。
けど、悩んでいても仕方ない。
流さんが何処かへ行ってしまうかもしれない。けど、流さんは何処にも行かないかもしれない。
流さんは、元居た時代に帰ってしまうかもしれない。でも、帰らないかもしれない。
別れが来るかもしれない。………来ないかもしれない。
なら、悩んでいても仕方ないだろう。
そんな俺の心の機微を読み取ったかのように弥吉さんが笑って云った。
「わてはこれから忙しくなるんどす。どっかの重病人はんを看てやりたいところなんやけど、出来ひん。………沖田はん、わての変わりに行ってくれへんか?」
だから、俺は、立ち上がりざまに、にやっと笑って弥吉さんに頭を軽く下げた。
「弥吉殿。恩に着ます。」
そうして俺は、医務室を飛び出したのだった。
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