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弥吉さんから口実をもらって、俺は、流さんがいるであろう、先程まで俺が寝ていた部屋に足を運んだ。
己の告白は、図らずも流さんに聞かれてしまった。
少なからず、俺の中に恥じる気持ちはある。
でも………………。それを超えて、己を突き動かす激情が、此処にある。
本来なら未来に生きるはずだった美しい女(ひと)。
ふとした瞬間に掻き消えてしまうのではないかと、怖くて。
今すぐ、この腕の中に閉じ込めてしまいたい。愛しい、あの人を。
逸る気持ちをそのままに、月明かりの照る廊下を駆け抜けた。
あたしはまだ、布団に突っ伏して、気持ちを落ち着けようと必死だった。
走った訳でもないのに、心臓が痛いくらい鳴っている。
全身の筋肉が強張って、髪の先にまで神経が行き渡っているような錯覚に囚われて。
今ならナイフで、いや、現在の道具で云うなれば、脇差で皮膚を切り裂かれたとしても、きっとあたしは痛いとは思うまい。それくらい、皮膚が熱い。
ーーーーーーーーー何かの、病気なんじゃないだろうか。
そう疑ってしまうほどに。
「恋の、病、ねぇ。」
そう嘯いて、ちょっと赤くなった。
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