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「…………………」
でも、思いとは裏腹に鍵をかけられたように固く閉ざされた自分の唇。
もどかしくて、固く、拳を握った。
そんなあたしを見て、総司さんが口を開いた。
「例え、流さんにどう思われていようと、俺の云ったあの言葉は違(たが)わない。だから…………。」
それきり黙り込んだ総司さんを見て、あたしは、ふと、総司さんも自分と同じような思いをしているのではないかと思った。
しかし、あたしの唇は、依然として頑なに開こうとしない。
じれったくて、あたしは総司さんの首筋に手を伸ばした。
すると、面白いくらいにするすると言葉が出た。
「……………好き、なの。総司さんが。」
そう云った途端、総司さんが、ひゅっと息を呑んだ気配がした。
構わずに続ける。
「元居た時代でも、あたしはまともな恋愛したことがないから、恋とか、相変わらずよく分かんない。…………………けど、総司さんが好きっていうのは紛れもない事実なの。あたしは、」
しかし、あたしの言葉は途中で途切れた。
………………何故なら。
総司さんに、今までにないくらいの力で抱き締められたから。
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