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まるで、湖の底を漂うような浮遊感。
心地の良い、穏やかな闇。
ーーー此処は、どこ?
唐突に、頭に鈍痛を認めた。
続いて、首に何かが巻き付くような息苦しさ。
「起きろって、云ってんだろぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「う…る、せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
少女、葉月 流(はづき ながれ)は、くわっと目を開けた。
深い眠りから漸く目覚めて、流が一等始めにみたものは、恐らく、己の腹の上に騎手よろしく跨り、小型の鉄製の目覚まし時計を片手で振り上げる少年の姿であろう。
「……なぁに、しとんじゃぁぁぁぁ!!!この、糞餓鬼がァ!!!!あァ!?」
「お早う、姉貴。死んで。」
凄んだ流を尻目に、爽やか過ぎる笑顔で暴言を吐いた美少年。彼は、流の一つ年下の弟、葉月 護(まもり)である。
「死ぬかァ、ぼけェ。」
流は、手際良く護の手から目覚まし時計を叩き落とし、上体を起こそうとした。
「何で。起きようとしてる訳?」
しかしそれは叶わず、流は護に押し倒される。
「護、あんたねぇ。あたしら、取り敢えず姉弟だよ。この体勢が絵面的に悪いってこと、あんたも、16になるんだから理解してよね。」
流は、押し倒されたまま、畳に置いてあった腕時計を取り、素早く付けた。
流の場面適応能力は素晴らしい以外の何者でもない。こんな状況でも、取り乱すことなく身仕度を整えることが可能なのだ。
「その言葉、そのまま返す。」
しかし、護の言葉に流は固まらざるを得なかった。
「姉貴だって、17だろ。俺が、この体勢で何しようとしてるかなんて、分かるんじゃねーの。」
「はい?」
英語で云うなれば、why? だ。
どうして?なんで?は?意味わかんねーよ。
マジで姉ちゃん寝起きなんだよ、勘弁してくれ。
しかも、これ、1ページ目だろ?展開速過ぎやしねぇかい!?
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