先ず、あたしは叶わぬ野望を抱く。

4/14
前へ
/492ページ
次へ
云うが早いか、流はぱっと立ち上がり服を脱ぎ始めた。 「姉貴、何してる。」 呻きに混じって、護が流に問う。 その間にも流は容赦なく服を脱ぎ捨てていき、流の真白い裸形が生まれていく。 「護が、あたしの寝起きを襲うから、着替えを恥らう時間もない訳よ。お分かり?」 流は手を止めない。 「だからってなあ。」 護は流の布団の上で赤くなって俯く。 「護ってさ、よくわかんない子よね。姉の寝起きを襲ってみたと思えば、同一人物の着替えに恥じらってみたり。」 流は早くも制服のリボンを結んでいる。 「姉貴が変なんだよ。」 「失礼な。別にいいじゃない。此の世でたった一人の全く同じ血が流れた姉弟よ。」 流は軽い口調だったが、酷く優しげな目で護を見つめて云った。 「まあ、そうだけど。」 護は気恥ずかしそうに、下を向いている。 「じゃあ、あたし、もう行くから。」 「あっ、おい。姉貴、朝飯は!?」 革鞄を肩に掛けて足を踏み出した流を、護は慌てて止めた。 「なんか、どっかで拾うわー」 しかし返って来たのは、ド適当な返事。 「くっそ、たまには良いこと云うかと思ったら…。姉貴なんて、マジで、拾った食いもんの中に毒物混入してて、あっさりと死ねば良いのに…」 持ち主を無くした部屋に残されたのは、酷い形相の護の恨めしげな言葉だった。
/492ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1221人が本棚に入れています
本棚に追加