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流は友達と、とある信号機の前で待ち合わせをしていた。
彼女の名は、芦部 清羅(あしべ せいら)。流の通う高校とその周辺校にその名を轟かせる絶世の美女だ。
その容姿は、可憐とも、妖艶とも形容し難く、ただただ、美しいの一言に尽きる、と云った感じだ。
「ラーちゃん!オハヨ!」
そう叫びながら清羅に突進する流もなかなかの美しさなのだが、なんせ、その言動が流の”美しさ“と云うものになるもの全てを霞ませている。
「お早う。流(りゅう)。」
この二人は互いを愛称で呼び合っている。それは当たり前だが、その愛称、と云うのがまた珍妙だ。
流(ながれ)は、流(りゅう)。
清羅は、何処からきたのか、ラーちゃん、と呼ばれている。
端から聞けば、別人を呼んでいるようにしか聞こえないだろう。
「今日はまた遅かったな。」
この清羅と云う少女は、容姿が人形のように整っているのに加えて、淡白な性格をしている。
「だってね、護ったらあたしの寝起きを襲って来たのよ!?信じられる?」
ぎゃーぎゃー喚く流とは正反対である。
「しかし、流は護くんが好きなのだろう。」
「そりゃあ、家族だもの。」
小さく云って、流は微笑む。
こういうとき、流ははっとするほど綺麗な表情をする。清羅でさえも目を奪われるものがある。
「けれど、遅れた理由はそれだけではあるまい。」
清羅は悪戯っぽく笑って云った。
「まあね。」
そして、ニヤリと笑って流も返す。
清羅の”遅れる“、は大抵、護に何かされたか、寝坊だ。それを毎日、怒りもせずに待っている清羅は賞賛に値するだろう。
「今日は何の夢を見た?」
そう。流の寝坊は全て夢によって引き起こされるもの。
そして、その夢は毎回同じ。
「清羅も、よくそんなに飽きもせず聞くねぇ。勿論そこは…」
「「新選組。」」
二人分の声が完璧に合わさった。
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