先ず、あたしは叶わぬ野望を抱く。

6/14
前へ
/492ページ
次へ
何を隠そう、あたし、こと葉月 流は大の新選組ファンだ。 その、愚直なまでの信念と、強靭な剣客達の儚い散り際。 惹かれてやまない、憧れの存在。 まぁ、彼らが存在していたのは今から150年ちょいちょい前だけどね。 手の届かない、永遠の片想い、とでも云っておこうか。 「流だって、新選組に負けないくらい格好いいけどな。」 清羅が云ってくれた言葉に嬉しくなって、流はニカッと笑った。 「ありがと、ラーちゃん。」 でも、と流は続ける。 「でも、あたしなんかじゃ適わないんだ。こんな、甘っちょろい、平和ボケした世界で、あんなに己を貫ける人間が生まれる訳がないんだ。」 「私には、流も、己を貫いているように見えるが。」 清羅は至極真面目だ。 「うーん、まぁ、確かに、そこら辺にたむろしてキャーキャー騒いでるギャル的なのに比べたら、あたしの方が、そりゃ、強い信念を持ってるさ。」 でも、やっぱり、彼らには適わない。 「新選組、とか、所謂(いわゆる)幕末の志士って云うのはさ、なんて云うか、憧れって云うより、目標、みたいなものなんだよ。あたしにとっての。」 「目標?」 「そう。あたしの、あたしの中の大切な指針になってる訳サ。」 清羅は興味深そうに流を見つめる。 「い、嫌だァ!そんなに見つめないでよぅ!」 「や、そう云う意味で見てる訳じゃないし。」 流のオフザケに大真面目に返答してくる清羅の言葉は、刃渡り30㎝くらいの凶器となって、流のガラスのハートにずぶっと突き刺さった。 …ような気がした。
/492ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1221人が本棚に入れています
本棚に追加