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「うぁあああ――ッ!」
全身を激痛が走り、男は空を仰ぐようにして叫ぶと、そのまま地面に崩れ落ちた。
ルースに付けられた傷から黒い血が流れ出る。
「殺すなよ?」
ルースの言葉に、ノエルは男を見下ろしながら答える。
「これぐらいじゃ死なないさ。まあ、魔物の血がすっかり体に定着してるみたいだから、相当キツイのは確かだろうけどね。」
気を失った男の体は、それでもビクンビクンと反応を示している。
「じゃあ、俺は先に戻る。後は頼んだ。」
そう言ったルースを、ノエルが呼び止める。
「ルース。君には、君の考えがあるのはわかってる。」
ルースは、振り返らずに黙ってその言葉を聞いた。
「長い付き合いだからね。君の性格もよくわかってるつもりだけど。」
一旦言葉を止める。
ルースは、ノエルを振り返り、訝しげに眉根を寄せる。
そんなルースに、ノエルは微かに苦笑いを浮かべて言った。
「たまには、素直になってもいいんじゃないかなぁ?」
「…。」
ルースは答えずに風を呼ぶと、先に男の体を浮かせ、そのまま風に乗って飛び去って行った。
その空を見上げて、ノエルは少し呆れたようにため息をこぼす。
「ま、そーいうとこも嫌いじゃないけどね。」
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