補佐官の休暇

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「どうしようもない、のか?本当に?」 問い掛けられても、ルースには答えられない。 「お前は、何を躊躇っている?何故躊躇う。」 何故・・・? ほんの数秒、考えに耽ってはみても、ルースはあえてそれを断ち切る。 「…わかんねーよ、俺には。」 独り言のように小さくそう返して、ルースは踵を返し窓へと向かった。 「ルース?」 その様子の変化にジャスティンは訝しげに顔を歪め呼びかける。 「あとのことは、適当に連絡する。」 それ以上何も問うなと、そう言っているのを学長もジャスティンも察していた。 窓際まで来ると同時に、ルースの体を風が取り巻いた。 彼がその部屋に現れた時と同様、部屋中を風が渦巻き再び書類を舞わせた。 次の瞬間には、もうそこに長身の姿は無かった。 「ルースの属性は、水、でしたよね?」 ルースの去った窓をしばらく眺め、呆けたようにジャスティンは言った。 元々どんな魔法も卒なく使いこなしてみせるタイプではあったが、それにしてもこの風の使い方はジャスティンの記憶するものとは少し違うように思えた。 「人の魔力は心に帰属するものだ。心に変化があれば、魔力もそれに伴って変わりうる。」 「ですが、基礎的な属性の偏りは…。」 「属性の概念は人間が魔力を扱うに当たって理解しやすいように区分しただけに過ぎない。要するに後付だな。力の偏りなど、それこそ何を求めるかによって変化するものだろう。」 その言葉は理解できる。 実際に自分の属性に限らず、修練さえすれば魔法の幅は広がる。 だが、同じ属性でも人によってその質はまるで違い、そこに特徴が表れるのも事実だ。
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