補佐官の休暇

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「さあ、ジャスティン。呆けている暇は無さそうだ。」 そう言われ、ジャスティンはハッと顔をあげる。 見れば、にこやかに笑う学長の手に数枚の書類が握られている。 学長はそれをジャスティンに差出した。 「これは?」 どこか覚えのある名が並んでいる。 各地域の評議員や世界的に名の知れた学者、医師、かつての王族の血縁という者の名もある。 順に数名を確認したところで、ジャスティンはハッと息を飲む。 「これ、は、どうして…っ。」 「今、ルースが置いていったようだ。」 「ルースが?」 ここへ入ってきた時、散らばった書類を風で机に戻したのを思い出す。 あの時混ぜたのか。 「それが何か、君にもわかるんだね?」 「…。」 その問いと、鋭い眼光にジャスティンは言葉につまる。 「学長は、どこまでご存知なんですか。」 逆に問うと、学長はふう…と静かに息を吐き目を伏せた。 「実際に目にしたことは無い。噂はもうずいぶん昔からあったがね。私は、ここに勤めて長いのでな。確かめようにも、管轄外のことはなかなか難しい。」 伏せていた眼を再びジャスティンへと向ける。 「だが君なら、手が届く。」 「…。」 「事は急を要する。だが、慎重に、な。」 学長の口調も表情も穏やかであるはずなのに、ジャスティンはのしかかる重圧に緊張を隠せずゴクリとつばを飲み込んだ。
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