囚われた獣

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「貫け…。氷槍(ひょうそう)!」 鋭く尖った氷の槍が、3頭の双頭犬オルトロスに降りかかる。 「グゥァアアッ!」 内1頭は、片方の脳天を氷の槍に貫かれ、どす黒い血を撒き散らして崩れ落ちる。 残る2頭は、傷を負い、体のあちこちから血を流しながら、赤い眼をぎらつかせてルースに狙いを定める。 バルトローザから、十数キロ離れただけの場所だった。 近くに民家などは無いが、放置すれば、やがては街にも被害が及ぶだろう。 疑問が幾つか浮かぶ。 この近辺には、魔獣が棲みつくような空気の淀んだ場所は無い。 水も清浄で、光も射し、普段から人の往来のある場所だ。 魔獣は、光を嫌う。 力が高まる満月期以外は、暗闇に身を潜め、そこに迷い込んだ者を食らうくらいだ。 今は、満月期でもない。 なのに何故、こんな場所に、突然現れることができた…? 「ガァアッ!」 襲いかかってきた一頭を避け、タンと後方へ数メートル跳び、距離を取る。 だが、その後ろにすばやくもう一頭が近づく。 「ったく、めんどくせぇ…。」 舌打ちをしてぼやきながら、ルースは手にしていた村雨の召喚を解除した。 とりあえずは考えることをやめ、目の前の獣に意識を集中させる。
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