18508人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
「貫け…。氷槍(ひょうそう)!」
鋭く尖った氷の槍が、3頭の双頭犬オルトロスに降りかかる。
「グゥァアアッ!」
内1頭は、片方の脳天を氷の槍に貫かれ、どす黒い血を撒き散らして崩れ落ちる。
残る2頭は、傷を負い、体のあちこちから血を流しながら、赤い眼をぎらつかせてルースに狙いを定める。
バルトローザから、十数キロ離れただけの場所だった。
近くに民家などは無いが、放置すれば、やがては街にも被害が及ぶだろう。
疑問が幾つか浮かぶ。
この近辺には、魔獣が棲みつくような空気の淀んだ場所は無い。
水も清浄で、光も射し、普段から人の往来のある場所だ。
魔獣は、光を嫌う。
力が高まる満月期以外は、暗闇に身を潜め、そこに迷い込んだ者を食らうくらいだ。
今は、満月期でもない。
なのに何故、こんな場所に、突然現れることができた…?
「ガァアッ!」
襲いかかってきた一頭を避け、タンと後方へ数メートル跳び、距離を取る。
だが、その後ろにすばやくもう一頭が近づく。
「ったく、めんどくせぇ…。」
舌打ちをしてぼやきながら、ルースは手にしていた村雨の召喚を解除した。
とりあえずは考えることをやめ、目の前の獣に意識を集中させる。
最初のコメントを投稿しよう!