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バルトローザ近郊に広がる農園地帯では、近頃、それぞれの土地の所有者達が、交代で夜間の警備に当たっている。 「出てくると思うか?」 「さあな。でも、仕方ないだろ。罠は綺麗に避けられちまう。」 数ヶ月前から、この近辺で栽培されている作物が荒らされている。 野生の動物が出没することは珍しくは無いため、幾つかの罠を仕掛けたが、それらは全て避けられていた。 「しかし…。足跡も残って無いってのがなぁ…。」 「よっぽど頭のイイヤツなんだな。」 「変なモンだったらどうすんだよ?」 「変?」 「ああ。ほら…。魔物とかよ?」 「ば…っか言うな。そんなもんだったら、野菜なんかより、人間のが危ねぇだろッ。」 「んでも、ただの動物が、あんな採り方すっかぁ?」 荒らされている…とはいっても、獣が食い散らかしたようなものではない。 数日毎に、実った野菜や果物の一部だけを綺麗に刈り取って行く。 とても、腹をすかした獣のすることとは思えない。 それよりは、もっと知能の高い。そう、人間にも近い何かのような…。 「案外、人間の仕業とかじゃねぇか?」 「だったら、ただじゃおかねぇ。」 男はそう言って、猟銃を構える。
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