囚われた獣

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「なんだ…、お前…。」 ノエルが人間ではないことを感じ取っているんだろう。 「最初は、少し苦しいかもしれないけど。それぐらいは我慢してくれる?」 ノエルは淡々とそう言って、男に向けて手を翳す。 その手に白い光が浮かび上がると、それを掴み取るように柔らかく手を動かす。 光は球体となって、ふわりと宙に浮き、ノエルはそれを掌に乗せると、ゆっくりと男の顔の前に持っていった。 「そ…れは…、光…っ。」 男が驚愕し、目を見開いたその瞬間に、ノエルは男の額にその光を押しつけた。 光は男の額に吸い込まれ、同時に男はそのまま硬直する。 男は、体の中をその光が駆け巡って行くのを感じ取ることができた。 熱いような、冷たいような、奇妙な塊が全身をものすごいスピードで巡って行く。 そうして、やがてそれが心臓まで届いた瞬間。 ドクン! 鼓動が一際大きく打った。 「ぐ…っ。あ、あ…っ。」 途端に男は胸を抑え、蹲る。 「はっ。ぁああっ!」 呼吸すら儘ならずに、男はその赤い眼を目いっぱい見開いてノエルを睨む。 ノエルは、男の前にしゃがみ込むと、冷めた眼差しを向けた。 「少し我慢すれば楽になるよ?5歳の子ですら、これに耐えたんだから。あまり見苦しい姿は晒さないでくれるかな?」 ノエルが男の体に入れたのは、光の属性を持つ魔力の塊だ。 魔物の血に侵された体の中で、それは抗体のような役割を持つ。 体に染みついた闇の力が、送り込まれた光の力に拒絶反応を起こすのだ。
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