迷子

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だから俺は俺の作った料理を美味そうに食べてくれたら形式なんていらない。そんなもの糞くらえだ。おっと食事中に糞は流石にダメだな。飯が不味くなる。 そう考えているとドッシーン!!と音をたて倒れた奴に気付いた。俺は慌てて 「どうした!?まさか毒を持ってる野菜とかあったか!?解毒草とかどこだ!?」 と心配しつつ応急処置をしようと聞いてみたら 「美味すぎて食い過ぎた…ちょっと横にならしてくれ…」 と苦しそうに嬉しいことを言ってくれた。料理する人にとって『褒めてもらえる』それだけで次も頑張る。もっと美味しい味に昇華させるという意欲が湧いてくる。俺は嬉しくなり更に毒などじゃなかった為力が抜け安心する。 「食い過ぎか。右半身を下になるように寝てみろ。楽になるぞ。」 とアドバイスをしたあと少し冷めた飯を口にかきこんだ。 うん。あまり人の為に作ったことなかったが褒められるのはいいもんだ。あんだけ気持ちのいい食べ方する奴にならいくらでもつくってやろうか? 俺は今まで自分の料理を子供の時に親に食わせた以外他人に食わせたことがない。彼女でさえも。何故か?それは、俺が作らなくても先に作ってくれてるからだ。じゃあ、何故料理が上手いかだが、前も言ったが弁当は自分で作り研究した結果上手くなった。量より質のタイプらしい俺は。 とのんびり考えてたら奴が起き上がり椅子に座り直した。 「こんな美味い料理初めてだ。ありがとう。あと食べ始めと終わりに言ってた言葉はなんだ?」 改まって言われ更に礼も言われるとこそばゆい。『礼には礼で返す』当たり前のことだが出来ない人が多いと思う。当たり前が一番難しいのかも知れないな?と、奴の質問に答えねば。 「こちらこそ。料理で褒めてもらえたのは何年ぶりかだから嬉しかった。あの言葉だが、単純だ。『頂きます』は生きていたものを食すさらにそれを提供してくれた人にも感謝の意を込めて言った言葉だ。『ご馳走様でした』はどんなに貧しい料理でも命があったものだから命は尊ぶべきもの。それをご馳走ではなくなんと呼ぶ?と俺は解釈し感謝して言っている。弱肉強食。当たり前だが当たり前であるから皆忘れてしまうんだよな。ま、忘れないためにも言っているという訳かな。」 と言い終えると奴は泣いていた。奴曰く人間にそんな考えができる奴がいなく感動したのだとか。
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