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「ただいま。あの娘はおとなしくしてた?」
玄関から姉の声が聞こえる
「もちろん、良い子にしてたわよ」
赤く……
「って、あんた達どこに居るのよ?」
居間から姉の声がする
紅く……
「すぐにそっちに行くわ」
赤く染まった右手と、脂で光る包丁に目を落とすと、更に心が穏やかになるのが解る
「ねぇ、姉さん?私やっぱり結婚式には出席しようと思うの」
緋く……
「何言ってるのよ。それよりも喉渇いたわ。何か無いの?」
姉はソファに寝転がって私の方を見ない
「何か変な臭いしな……」
赤く紅く緋く……
「姉さん。私、今日はとっても気分が良いの。こんなに穏やかですっきりとした気分は、あの日以来初めてかもしれない。結婚式にもきっと穏やかな気分で祝福できると思うわ」
姉の瞳は驚いたように見開かれたまま、何も映そうとはしない
赤く染まった姉を見下ろし、その穏やかな顔に満足する
「真っ赤なドレスを買いに行こうと思うの。それに、もっと良く切れるナイフも必要ね。ねぇ、知ってた?赤って心躍る色では無くて、穏やかにする色なのよ?」
見上げた窓からは真っ赤な月が見える
「世界中が赤で満ちれば、みんな穏やかに過ごせるようになると思うわ」
赤く……
「この部屋も、さっきよりもずいぶん美しくなったと思わない?姉さんもそう思うでしょ?」
緋く……
紅く……
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