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†里紅side†
太陽が傾き始める頃…あたしは仕事の支度を始める。
キラキラした派手な振り袖を着て 肌をわざと見せるように肩を少し出す。
白粉を頬に塗り真っ赤な紅を唇にのせ香水を頭から被るように吹き付けた。
よしできた。
「里紅ちゃーんそろそろ行くわよー!」
「はーい!」
あたしは鏡台で髪を整えながら返事をした。
…ここは街の片隅にある飲み屋。
言っちゃえばキャバクラと同じで お客さんは男の人だ。
屯所を出ていく宛のなかったあたしはしばらく夜の街をさ迷った。
そしてこの店の女将さんに声をかけられ、いく宛はないと言うとここで働かないかと言われた。
…水商売は絶対したくないって思ってたけど 身寄りも金もないあたしは女将さんの言葉に甘えるしかできなかった。
控え室から出てお客の待つ煙草臭い部屋に向かう。
営業時間前だというのにもう数名席についていた。
「里紅ちゃんこっち」
先輩遊女の方に手招きされてあたしは座敷に入った。
「いらっしゃいませ。…新人の里紅です。どうぞよろしく…」
「おぉ、早よう酒を注げ」
「あ…はい」
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