第9章 恋の蕾は開花時期

7/29
前へ
/503ページ
次へ
女の子は目から大粒の涙を溢している。 「大丈夫…?」 「ぁあぁあああん!」 あたしはそっと女の子の頭を撫でる。 「痛かったね…。でも女の子は人前でそんなに涙見せちゃダメだよ? ここぞって時にだけ使わなきゃ」 「…ここぞ…?」 「そう。例えば男落とす時とか」 ―バチン!! 「痛っ!」 突然後頭部に痛みが…。 「ガキに変なこと教えんな!」 む…。沖田に怒られた。 「…平気かガキんちょ」 「…」 女の子は少し怪訝そうに沖田を見ている。 怯えてるんじゃない? 「…これやる」 「わぁ! ありがとう!」 沖田は懐から包みに入った小さな大福をとりだした。 大福ーっ!! 女の子は嬉しそうに受けとると、さっきの涙はどこへやら沖田に手をふって去っていった。 「よくそんなの持ってたね。あたしにもちょうだい」 「嫌だ。…甘いものは嫌いじゃねぇんだよ」 沖田は包みを懐に戻すとあたしに構うことなく歩き出した。 …見かけによらず可愛い…。
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

702人が本棚に入れています
本棚に追加